大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所大法廷 昭和23年(ね)2号 決定 1949年2月25日

主文

本件を東京高等裁判所に移送する。

理由

本件再審の請求は、請求人に對する、殺人放火死體損壞被告事件につき大阪控訴院が昭和一七年九月九日言渡した有罪の判決に對し上告の申立があり、大審院において同年一二月二二日、原判決には重大なる事実誤認を疑うに足るべき顕著な事由があるとして事実審理を爲す旨の決定を言渡し之に基いて事実審理をした上、昭和一八年一〇月二日言渡した有罪判決に對し昭和二三年三月二五日になってはじめて當裁判所に申立てられたものである。舊刑事訴訟法第四九〇條によれば再審の請求は、別段の規定ある場合を除くの外原判決を爲した裁判所にこれが管轄權があり、本件では原判決を爲した裁判所は大審院である。そうして裁判所法施行法第二條に基く裁判所法施行令第一條には、「大審院においてした事件の受理その他の手続はこれを東京高等裁判所においてした事件の受理その他の手続とみなす」とあるが、いわゆる「その他の手続」といううちには、大審院でした事実審理の公判手續を含むことは勿論その手續によりなした判決言渡手續及び言渡された判決をも含むものと解すべきである。されば、大審院廢止後の今日に於ては、東京高等裁判所が、本件の「原判決を爲した裁判所」にあたる。從って本件申立の管轄權は同裁判所にあり、最高裁判所はこれを有しない。

よって主文のとおり決定する。

この決定は裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上 登 裁判官 栗山 茂 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例